門 愛子(法律学科、2001年卒)
外務省経済局APEC室
私は、中学生時代に、テレビ中継された湾岸戦争を見、平和な日常の中で突然戦争という現実を見せつけられたことがきっかけとなり、国際政治に惹かれ、将来それを動かす組織に身を置きたいと思うようになりました。
上智大学では、国際的な環境の中で国際政治や法律を修めることができると考え、進学先に選びました。在学中は、国際関係副専攻(当時)を在籍していた法学部法律学科のカリキュラムと並行して履修し、法律的な考え方と同時に、国際関係に関する理解を深めることができました。とはいえ、1年目はゴルフ部に所属し、大学生活が楽しくて仕方なく、殆ど授業に出席しないまま過ぎてしまい、殆どの単位を落としてしまいました。自分自身の余りの怠慢に落ち込み、2年目には心を入れ替え、学業に復帰(?)し、また、3年目には、交換留学制度を活用してパリ政治学院に留学させていただきました。この経験は、語学や文化の違いのみならず、国際政治に関する理解においても、私にとって非常にショッキングで、国際場裏における自分の実力や、日本人としての立ち位置を考えせられ、このわずか10か月間の経験なくして、今の私は存在しなかったと思うほど、私の人生に大きな影響をもたらしました。部活に勉強に留学にと、幅広い学生生活を送らせてくれた上智大学の懐の深い教育環境の御蔭で、私は、自分と世界を実質的につなぐことができ、国際社会に自分を位置付ける一歩を踏み出すことができたと考えています。
卒業後は、東京大学法学政治学研究科において、フランスとEU政治の研究に携わり、納得のいくまで学問を修めました。博士課程を中退し、外務省専門調査員を経て、国連ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)の試験に合格し、国連開発計画に派遣、その後、欧州復興開発銀行勤務を経て、外務省専門職中途採用試験を受け、現在に至ります。
自由且つ国際的な環境の上智大学で修めた学業や精神性は、国際人として、協調性や違いを尊重する考え方の礎になっていると思います。この御蔭で、世界のどこの組織で何をしても、(若干の強弱はあるものの)どんなバックグラウンドの人とでも楽しみながら働くことができたのではないかと考えています。
また、世界各地で出会う卒業生の活躍やネットワークにも支えられました。上智大学の卒業生は、校風を反映して、リベラルで柔軟な考え方を持っておられる方が多く、後輩を温かく支えてくださいました。現在在籍するアジア太平洋経済協力(APEC)室では、室長と室員の2人のソフィアンに囲まれ、またAPECにおけるFTA・EPAにおける競争章に関するワークショップでは、ソフィアンの交渉官にモデレーターをしていただき、室長にパネリストとして参加していただくという偶然にも上智大学卒業生による協力案件を実施しました。
上智で学ばれている学生の皆様、どうぞ、上智大学ならではの環境から多くを学び、将来への糧としてください。大学時代に一生懸命取組んだことで、社会に出てから役に立たなかったことはありません。一つ一つのことに真摯に向き合い、たくさんの経験をして、充実した学生生活を送ることが、社会に出て活躍するための重要な第一歩だと思います。
(2021年2月)
APEC高級実務者会合の際の経済委員会で発言する門さん(2020年2月、マレーシア・プトラジャヤにて)