上智大学法科大学院 Sophia Law School

科目紹介

法曹としての真の実力を養う法律科目 ― 充実の教授陣が鍛えます

憲法基礎

巻 美矢紀
教授 巻 美矢紀

 憲法は、小学校から学んできたもので、しかもニュースなどで取り上げられることも多いので、法の中で最もなじみがあるものかと思います。これまで学んできたことは一般市民としての最低限の知識ですが、これからは憲法を専門的に学びます。

 憲法も法であり、他の法律科目と同様、解釈を学びます。憲法は法律と比較し、抽象的な文言が多く、その解釈においては、歴史をふまえた比較法的理解が特に必要になります。

 最終的な目標は、法の専門家として、憲法に関する具体的な事案を分析し、合憲性を判断しうる能力の涵養ですが、そのためには、分析や判断の道具が必要になります。「憲法基礎」では、その道具となる判例や学説の基本的な理解を学びます。「憲法はセンスだ」といわれることがありますが、他の法律科目と同様、結局は、本人の努力にかかっています。「憲法基礎」では、みなさんの努力が報われるよう、基本的な道具のポイントをきちんとおさえるためのお手伝いをします。

民法B

永下 泰之
教授 永下 泰之

 民法A~Cは、2年生を対象とする民法の財産法に関する科目です。これらの授業では、既に一定レベル以上の民法の知識があることを前提として、双方向の問答形式(ソクラティック・メソッド)で、事例問題の検討を通じて知識の確認をしつつ、それら知識をどのように文章に落とし込んでいくかを検討していきます。このうち、民法Bは、主に債権各論を扱います(債務不履行等、契約法に関連付けて債権総論の部分も扱います)。本講義は、売買や請負といったいわゆる典型契約に関する事例問題を検討することにより、知識の「活用」方法を習得することを目的としています。

 民法は、総則・物権・債権・親族・相続の5編からなる法律であり、条文数も1000を超えるなど、扱う内容は非常に広範多岐に渡るため、学習すべき内容は膨大であり、一朝一夕で身につくものではありません。そのため、学習に際しては、単に知識として覚えるだけでなく、相互の関連性を意識する必要があります。本講義では、この相互関連性を意識できるように工夫して進行していきます。3年次には、民事法総合という科目において、長文でより実践的な事例問題を検討する授業が展開されます。本講義でしっかりと基礎を確立して、3年次の応用科目への力を培うことが目標になります。

商法基礎

土田 亮
教授 土田 亮

 商法基礎では主に会社法を扱います。会社法は商法分野のひとつで、商法は民法の特別法に位置づけられます。多様なステイク・ホルダーの利害を調整するため、会社法典には1000を超える条文があり、学修事項は非常に多くなっています。

 民法の特別法という表向きのイメージとは異なり、会社法の主な目的は会社の内部的あるいは対外的な行為の規制であり、規制法という側面があります。また会社法の規定の多くは会社の運営にかかる内部的手続きと紛争解決のための裁判手続きであり、民法はもとより、商法総則・商行為法とも異質なものであるといえます。このため学修に際して戸惑うことも多いかもしれません。会社法はよくわからない、何となく苦手だという声もよく耳にします。

 授業では会社法の手続規制としての側面から、会社法がどのような趣旨でどのような手続きを要求しているのかを系統立てて学修し、そのうえで要求された手続きに瑕疵がある場合の扱いを学びます。平板に規定を追うのではなく、規定の重要度に応じて濃淡をつけつつ体系的に学ぶことで、応用的な学修の基礎となる考え方をしっかりと固め、苦手意識を払拭することが目標です。

行政法

小舟 賢
准教授 小舟 賢

 この授業においては、すでに「行政法基礎」で一通り行政法の全体像を概観し、行政法の基礎的知識を修得していることを前提として、全国の法科大学院において広く使用されており定評のある判例教材である『ケースブック行政法』を用いて、これに掲載されている重要判例を中心に判例の分析・検討を行うことで、判例を論理的に読み解く能力を修得することを目指します。

 このような能力は、決して一朝一夕で獲得できるものではなく、日々の訓練を通じて得られるものであり、なおかつ、司法試験の合格を目指す上で、ひいては法曹として活躍する上で当然に必要となるものです。そこで、この授業を通じて、単なる規範定立箇所のみの理解にとどまらない、判例全体のロジックの読み解き方を教授することで、『公法総合』・『行政法演習』などの演習科目におけるさらなる学びや、司法試験に向けた自学自習などにつなげていくことを目指します。

刑事訴訟法A・刑事訴訟法B

岩下 雅充
教授 岩下 雅充

 この2つの授業においては、刑事手続に関する法すなわち刑事手続法の解釈・適用に欠かせない法的な思考力・分析力と論述力を高めるために、すでに得た基本の知識・理解をもとに、架空の事例や判例の事案を用いた検討などによって、解釈・適用のあり方を学びます。

 この学びにあたって注意を要するのは、刑事手続の進行を日常的に担うのが法曹三者や警察などのプロフェッショナル(専門的職業人)であって、その実務感覚にそぐわない考えや実践は受容されないという点です。また、捜査手段であれ起訴であれ証拠調べなどであれ、その手続が許されるのか否かはさまざまな価値を適切に勘案して決されなければならないのとともに、許されない手続がなされたのであれば、その後に連鎖して実施される手続をいかにとり扱うのか(たとえば、起訴が不適法と判明したとき、それまでの公判活動やその準備の集積を捨ててまでして訴訟手続を打ち切るべきなのか否か)という問題も検討せずにはいられません。ここで必要なのは、憲法や刑事訴訟法などの規定の内容・趣旨を十分にふまえて検討する力と、さまざまな立場や価値に配慮できるバランス感覚でしょう。これらを身につけるための解説や議論の場となるように、2つの授業を用意しています。

刑法

佐藤 結美
教授 佐藤 結美

 この授業は刑法総論・各論の基礎知識を前提として、事例問題を解く練習をしてもらうことを予定しています。司法試験では論文試験はもちろんのこと、短答試験でも具体的な事例を題材とした問題が出題されますが、事例問題を解くためには、身に着けた知識を適切な場面で取り出して、適切な方法で使う必要があります。授業を履修する皆さんには、知識を盤石なものにした上で知識の活用方法の基礎を身につけ、3年生で履修する総合科目につなげていただければと思います。

 刑法は学説の対立が激しく、覚えることが多くて大変だと言われることがあります。ですが、わからなくなった時には「この議論は何のためにしているのか」「判例と学説の対立によって結論がどのように変わるのか」ということに着目して考えてみることが必要です。